ノロウイルスによる食中毒が近年急増しています。ノロウイルスは大腸菌やサルモネラなどの他の細菌性食中毒と異なり、11月から3月までの冬期に多発します。これは、ノロウイルスが自然界の中で抵抗性が強く、寒い冬の時期に好んで感染を拡げるからです。
ノロウイルス(norovirus)の名前は、このウイルスが1968年に最初に発見された米国オハイオ州ノーウォーク(Norwalk)の地名にちなんでいます。ノロウイルスは生物ですが、細菌ではありません。ウイルスの基本構造は、遺伝子としてRNAまたはDNAを持ち、その遺伝子が蛋白の殻(カプシド蛋白)に取り囲まれた粒子となっています。ウイルスの種類によってはさらに殻の外側を覆うエンベロープ(外被)があります。非常に小さく、光学式の顕微鏡では見ることができません。
ウイルスが細菌と最も異なるのは、自分だけで増殖することができないことです。ウイルスは代謝をしないので、遺伝子及び蛋白を自分で作ることはできません。ウイルスが増殖するには、他の細胞の中へ入って、その細胞の代謝系を利用して自分のコピーを作ります。一方、細胞の外にいる状態ではウイルスは自ら動くことができず、単なる巨大分子です。
他のウイルスや細菌と比較して、ノロウイルスの特徴として挙げられるのは、
1)とくかく丈夫である
乾燥や酸にも強く、水中でも長時間丈夫です。一般に手指消毒に使われる消毒用アルコールや逆性石鹸はノロウイルスには有効ではありません。
2)感染すると嘔吐を起こす
ノロウイルスに感染すると下痢に合わせて嘔吐を起こします。吐物には大量のノロウイルスが含まれ、乾燥すると埃になって舞い上がり遠くまで運ばれます。
3)何回も感染する
ノロウイルスには多数の遺伝子型があるため、同じ人が複数の違った型のウイルスに感染します。
4)食品中では増殖しない
食中毒の原因となる細菌は食品中で増殖しますが、ノロウイルスの場合は食品中では増えません。そのため、ノロウイルスの食中毒では食品の保管ではなく、製造過程での汚染が問題になります。
次号では、ノロウイルスによる食中毒について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。